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校長先生のお話

2010年09月06日のお知らせ

ただ一度の敗戦

 今日の話は4月の朝礼で話した内容とほぼ同じ趣旨のものですが、若い人にとっては大事なことですから、もう一度角度を変えて話をしてみます。

 今年も夏の甲子園に全国から49の代表校が集まって高校野球の大会が開かれ、沖縄の興南高校が春夏連続優勝しました。地元の報徳学園もがんばったのですが、残念でした。

 ところで、この大会はトーナメント形式で優勝を決めるわけですが、49校がトーナメントで戦って優勝が決まるまでに合計何試合必要か知っていますか?……そう、勝ち上がるチームのことを考えてしまうとわけが分からなくなりますが、負けたチームの数を考えるとごく単純な話で、優勝校以外はただ一度敗れて姿を消し最終的に1校だけ残るわけだから、参加校総数-1回だけ試合があることになります。49校参加すれば48試合あるというわけです。

 考えてみれば、優勝校以外のチームは、一回戦で敗れるのかあるいは決勝まで進んで敗れるのかといった違いはあるにせよ、とにかくすべて一回は敗戦を経験するわけで、地方大会を含めると参加4028校中4027校の部員が悔しい思いをしたことになります。ということは、大会に出場するチームはもちろん勝つために戦うわけですが、見方を変えれば負けを経験するために戦う、ともいえます。

 勝利よりも敗北に注目した人がいます。巨人軍の元監督の長嶋茂雄さんです。8月5日の朝日新聞に紹介されていた話ですが、長嶋氏は8年ほど前のテレビ番組の取材で夏の甲子園の決勝を観戦した時に、「このトーナメントでは優勝チーム以外のすべての球児にただ一度ずつの敗戦が配られる」というような話をしています。「経験する」ではなく、「配られる」という表現が面白いと思いましたが、記事を読むと、長嶋氏はこのコメントに続いて、敗戦という悔しい思い、挫折感を味わうことによって得られるものの大きさについて強調された、とあります。私も同感です。大事なことは、悔しさや挫折感をどう生かしていくかということです。単に「悔しい」と思うだけで終わるのではなく、悔しさをバネに自分の欠点や足らなかったところを改善していけば敗戦が成長の大きな糧となるわけです。

 長嶋選手はプロ野球の初試合で大投手金田正一と対戦して4打席連続三振に切って取られます。さぞかし悔しかったことと思います。しかし、彼はこの屈辱をバネに猛練習をし、後に金田投手に逆にホームランを浴びせるなど、プロ野球を代表する選手に成長しました。

 君たちは、将来、色々な出来事に直面するなかで、ときには「敗戦」が配られることがあるかもしれません。そのようなとき、挫折しあきらめて撤退するのではなく、配られた「敗戦」と正面から向き合ってほしいと思います。そうすれば「敗戦」から得られるものが必ずあると思うし、その結果、自己を成長させることができるのだとも思っています。