強歩大会をがんばろう
新型インフルエンザの影響で3学期に延期されていた強歩大会がいよいよ4日に行われます。10キロ程度のマラソンなら実施している学校はいくつもありますが、30キロ以上となると実施している学校はそう多くないでしょう。昨年でしたか、電車の中で高校生風の二人連れの男子が六甲の強歩大会のことを話しているのを耳にしたことがあります。
「六甲ってスパルタ教育の学校やろ。」
「そうや。マラソン大会でも40キロぐらい走らせるらしいで。」
「マジか。」
「ああ。そいで、制限時間があって、時間内に帰って来れないと置いて行かれるらしいで。」
「ほんまか、そんなん嫌やな。」
とまあこんな具合で、どこから得たのか、でたらめな情報をもとに話をしているので内心笑ってしまった記憶があります。確かに30数キロという長い距離を走るわけですが、もちろん、六甲の強歩大会は時間内に帰って来なかった生徒を置いてきぼりにするわけではありませんね。先生方やドクターも常に巡回して生徒の健康状態をチェックしてくださり、安全面でも十分気をつけているなかでのマラソン大会です。
強歩大会は、走るのが苦手な生徒、運動が嫌いな生徒にとっては大変憂鬱な行事であろうと思いますが、多くの生徒にとって30数キロ走るということは六甲を卒業した後はもう経験しないことでしょうから、ぜひがんばってチャレンジしてほしいと思います。
それに、事情はまったく違いますが、がんばって走っているという点では共通する人間が地球の裏側にいます。これは私の弟から聞いた話ですが、ペルーにはグッバイボーイと呼ばれる少年がいるというのです。マチュピチュという世界遺産があることは知っていますね。ふもとからマチュピチュ遺跡まではバスに乗って行くのですが、帰りにバスがS字カーブをくねくね降りて行くと、カーブ地点に少年が立っていて、バスが来ると観光客に向かって、“グッバーイ!”と言って手を振るのだそうです。観光客も手を振り返す。バスは通り過ぎ、カーブを曲がってまた次のカーブに差し掛かると、不思議なことに先ほどの少年がまたそこにいて、“グッバーイ!”と声をかけるのです。
実は、彼はバスがゆっくり曲がりながら下りてくる間に一直線に坂を駆け下りてバスが来るまでに次のカーブ地点まで先回りをしているわけです。そんなことを何回か繰り返してふもとの駐車場まで降りてくると、そこにはすでにグッバイボーイが来ていて、観光客からちゃっかりとチップをもらうという算段になっているのです。家計を助けるためのアルバイトなわけですが、一人の少年がこれを1日に4回やるそうです。4回も、登って、走り降りるのは大変なことです。
この少年と六甲の強歩大会とを同列に論ずることはやや強引ではありますが、君たちもグッバイボーイに負けないようにがんばって走ってもらいたいものです。その際、何でもよいから目標を立てて走るというのが励みにもなるし、楽しみにもなります。たとえば、密かにトップを狙っている生徒もいるでしょうし、昨年は4時間以上かかってしまったので今年は4時間を切ろうと考えている生徒もいるでしょう。あるいは、クラブの誰それと順位を競っているというように特定の人物と競争しながら走る生徒がいてもよいでしょう。
せっかく与えられためったにない自己鍛錬の機会ですから、それぞれベストを尽くしてがんばってください。