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校長先生のお話

2009年04月度のお話

2009年04月度のお話です。過去のものから新しいものへ順番に並んでいます。

2009年04月07日

六甲中学校入学式

 3月の末から4月のはじめにかけて荒れ模様の天気が続き、本日の入学式の天候が気になるところでしたが、幸いよい天気に恵まれ、桜の花も満開となり、絶好の入学式日和となりました。
72期新入生の皆さん、六甲中学校入学、おめでとう。君たちは、小学校時代の厳しい受験勉強を乗り越えて、今日、入学式を迎えることができた喜びを今かみしめていることと思います。そして、これから始まる六甲での生活に大きな期待と希望を持って座席に座っていることと思います。

 先週、中1オリエンテーションがありました。私は、君たちが六甲での最初の行事に元気いっぱい声を上げ、一生懸命取り組んでくれている様子を見ました。また、記念の集合写真では、180cm近い身長の生徒がいる一方で、小学生といわれてもおかしくないような小さく可愛らしい生徒もいました。6年後、同じ位置で卒業写真を撮ることになるかもしれませんが、これからの成長が楽しみです。六甲では入学した年の順番に期の番号をつけて呼ぶ習慣があります。君たちは72番目に入学したので、72期生と呼ばれます。中学1年生は毎年変わりますが、72期生は君たちしかいません。どうか72期生としての自覚とプライドをもって六甲生活を送ってほしいと願っています。

 さて、君たちは六甲とはどのような学校だと思って入学しましたか。
イエズス会の経営する学校、きつい坂道を登る学校、便所掃除のある学校、勉強の厳しい学校、クラブ活動がさかんな学校、大きな行事を生徒が主体となっておこなっている学校、などでしょうか。確かにそのとおりです。
それでは、真の六甲生とはどのような生徒をいうのでしょうか。六甲で展開される日常生活を淡々とこなしていくのが真の六甲生でしょうか。それも確かに大事なことです。大事なことですが、少し物足らない気がします。

 私の友人に音楽大学の先生がいます。先生ですから、学生を教えるのが本業なわけですが、ピアニストでもありますから、1年に一度は大きなピアノ・リサイタルを開きます。その彼がリサイタルを前にして練習をしていたときのことですが、彼は、練習中に突然、聖書の言葉が浮かんできたそうです。それは、イエスの弟子のヨハネの書いた福音書の冒頭に書かれている文で、「言葉の中に命があった」という部分です。「言葉の中に命があった」。彼は、このとき、とっさにこの「言葉」を「音楽」におきかえて、「自分の音楽には命があるか」と問いかけながら練習を続けたそうです。リサイタルに向けての練習は毎日何時間もしなければなりませんが、その後の練習は自分にとって大変幸せな時間であったと、手紙に書いてきてくれました。実際、この年の彼のリサイタルは本当に素晴らしい演奏で、それまでの彼の演奏の中でもっともよい演奏でした。

 中学1年生の君たちは、これから六甲でさまざまなことを経験します。科目ごとに先生が交代して教える授業、新しい友人との交流、クラブ活動、文化祭・体育祭、便所掃除、キャンプ、研修旅行……。楽しいことがたくさん待っています。しんどいけれど達成感のある仕事もたくさんあります。君たちはこれらのすべてに全力で取り組んでください。最初は考える余裕もあまりなく無我夢中かもしれません。それでいいのです。でも、落ち着いてきたら、私の友人が「自分の音楽には命があるか」と自問したように、自分のやっていることに命を吹き込む姿勢を持つようにしてほしいと思います。「命を吹き込む」とは光をあてるということで、「命を吹き込む」ことができたときに、今までやってきたことに意味が生じます。達成したものの奥にあるものが見えてくるはずです。

 六甲の初代校長の武宮隼人先生が遺してくださった碑文が校庭の石に刻まれているのを知っている人もいるでしょうね。指導員の先輩に連れて行ってもらったクラスがあるかもしれません。こんなことが書かれています。

“すべてのものは過ぎ去り、そして消えて行く。その過ぎ去り消えさって行くものの奥にある永遠なるもののことを静かに考えよう”

 私たちが経験するものは消えていきますが、命を吹き込んで経験したものの奥には消えないものが残ります。武宮先生はそれを「永遠なるもの」と言われました。六甲は、創立以来君たち72期生を迎える今に至るまで、常に変わらず、永遠なるものを追い求める人間を育ててきました。私は、君たちもそうなってほしいと願っています。君たちはただ単に楽しいだけで消え去ってしまうものに満足するのではなく、本当のもの、永遠なるものを追い求める人間になってほしいと思います。六甲にはそれを探す場があります。永遠なるものを追い求めるならば、六甲での6年間は、君たちにとってきっと素晴らしい充実した6年間になります。

 72期生諸君、6年後の卒業式のときに、六甲での6年が素晴らしい充実した6年間であったといえるようにがんばってください。

 最後になりましたが、新入生の保護者の皆様、本日はご子息のご入学、おめでとうございます。
皆様は、六甲学院の学校案内やホームページに紹介されてもいます「六甲生のプロファイル」をご覧になったことがおありかと思います。プロファイルに書かれている若者像をかいつまんでご説明すれば、ありのままの自分を素直に受け入れ、他の人々の存在を肯定的に受け入れ、強い意志力をもって真理を探し求める姿勢を持つことで、よりよい社会を作り上げようとする人間ということになります。

 私たち六甲学院の教職員はご子息を大切にお預かりし、6年後には「プロファイル」に書かれているような志向性をもった若者に成長してくれるよう全力をあげて取り組む所存でございます。保護者の皆様方におかれましては、どうぞ六甲学院の教育にご理解賜り、ご協力をお願いいたしたいと存じます。

 ご子息と保護者の皆様の上に神様の豊かな祝福がありますことを祈りながら、式辞とさせていただきます。