文化祭に向けて
今日から文化祭の準備期間に入ります。昨年の文化祭は内容の充実した良い文化祭だったし、今年の体育祭も大好評だったので、今回の文化祭についても気分よく張り切ってくれていることと思います。
ところで、今年のロンドンオリンピックで日本人選手が活躍した競技の一つにバレーボールがありました。バレーボールというと、1964年、私が中学生だった時におこなわれた東京オリンピックでは日本女子は圧倒的な強さで金メダルを獲得し、その影響もあってか当時はバレーボール部の人気が高かったことを覚えています。今回のオリンピックで女子は見事に銅メダルを獲得しました。28年ぶりだそうですね。
私もテレビで観戦したのですが、見ていると一人だけユニホームの色が違う選手がいるのに気がつきました。あれはリベロというレシーブなど守備専門のポジションの選手を他の選手と区別するための措置なのですね。14年ほど前から採用されていた制度なので、バレー部の部員をはじめ知っている生徒がほとんどかもしれませんが、昔はなかったポジションなので私は今まで知りませんでした。リベロは審判の許可なしに自由に交代できるのでそれとわかるようにユニホームを違えているのですが、サーブやスパイクなど攻撃的なプレーはできません。規則でキャプテンにもなれないのですね。バレーボールの選手は背の高い選手が多いですが、リベロは背が低くてもやれる、要するに地味なポジションです。
今回先発メンバーのリベロは佐野優子という選手でした。佐野選手は身長が1メートル59センチと小柄な選手です。高校生の時はリベロの制度が導入されていなくて、出身校である京都府の北嵯峨高校の橋本監督の佐野選手に対する第一印象は、「とてもじゃないけど活躍するような子ではない」と思ったそうです。ところが、それは大きな間違いでした。故障した選手の代役で投入されると驚異的な動きを見せます。橋本監督の談によると、「落ちると思ったボールの下に必ずいる。『ここまでやるか』というぐらい、拾うわ拾うわ。」 どこにボールが落ちるのかを読む才能があったようです。チームに所属できない不遇な時期もありましたがめげずにがんばった結果、33歳でついに銅メダルを獲得しました。
点を取らなければ勝てないので攻撃力のある花形選手は絶対に必要だし、トスをあげるセッターも必要です。ですが、攻撃に参加できずひたすら守備に徹する地味なポジションだが自分に与えられた役目をきっちりこなすリベロがいることで、チームはゲームを作ることができます。リベロ佐野選手は本当にいい働きをしたと思います。
さて、文化祭の話に戻りますが、以前にも話したように、文化祭は体育祭とはずいぶんタイプの異なる行事です。研究発表あり、演奏や演技あり、制作発表あり、模擬店あり、様々な催しが何か所にも分かれて同時並行で進行します。質の高い研究発表になってほしいと思うし、舞台で素晴らしい演奏・演技を見たいとも思うし、おいしい食べ物を提供してほしいとも思っていますが、それがすべてできればそれで成功かといえばそうではありません。ごみが散乱していたら不潔な感じを与え、気分を害するでしょう。たくさんの人の前に立って目立つ役割を演じる生徒を横目に見ながら、目立たないけれども一日中一生懸命ごみ集めをする生徒がいてきれいな会場が維持されます。使われた食器を回収し洗って次のお客さんに使ってもらうために洗いものばかりして1日を終える生徒がいるかもしれませんが、そのような生徒がいなければおいしい食べ物を提供することができません。暑い中、案内役に徹する生徒がいることで間違えずに行きたい場所に行くことができるのです。
今年のテーマは「英(はなぶさ)」です。英雄の「英」ですが、文字通りの「はな」の房という意味も一方ではあります。きれいな花も、部分々々を見ればそれほどきれいには見えませんし、豪華にも見えませんが、それらが調和がとれ統一的に合わさっていくと素晴らしいはなのふさになります。これと同じように、一人ひとりが自分に与えられた仕事をきっちりこなすことでさわやかで引き締まった文化祭が出来上がると思います。
そのような意気込みを持って2週間準備をし、本番も頑張ってほしいと思います。