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校長先生のお話

2011年09月度のお話

2011年09月度のお話です。過去のものから新しいものへ順番に並んでいます。

2011年09月01日

2学期始業式

 長かった夏休みが終わりましたね。今年の夏はどのような夏でしたか?

 高3にとっては勉強一筋の夏だったでしょうか。 高2以下の生徒では、旅行に行き楽しかった、学校から離れた団体の企画に参加して有意義であった。 あるいはクラブ活動でがんばった、等々でしょうか。 1学期終業式が警報発令で取りやめになったため、夏期休暇に向けての話ができなかったのですが、充実した夏を過ごした生徒が多かったことを願っています。

 この夏は全国的に節電が叫ばれ、六甲でも社会奉仕委員会が節電を生徒に呼びかけ、赤松先生(理事長)も節電のお願いをされていましたね。 そこで我が家でも、今年は節電、省エネを実行することにしました。 具体的には世間の人がやっていることと変わりなく、エアコンをできるだけ使わない、使うときは温度を高めに設定する、不必要な照明は消す、水の使用を節約する、風呂はシャワーの回数を増やす、などです。 それから、グリーンカーテンもやってみました。 これも世間で一番人気のゴーヤを栽培してみました。 ゴーヤは居間から眺めると葉の緑がきれいで、思った以上に気分がよかったですね。

 これらの努力の結果、8月半ばまでの一か月の電気料金は前年と比べて17%節約になっていました。 今年は暑くなる時期が去年より遅かったので単純な比較はできませんが、それでもかなりの程度の節電になったことは確かだと思います。 世間ではひと頃に比べて節電を呼びかけるトーンが少し下がったように思いますが、我が家では今後も持続して取り組んでいこうと思っています。

 さて、2学期が始まりました。 学期の始まりにあたって一人の人物の話を紹介します。心を新たにして新学期に臨んでもらうための参考になれば、と思います。

紹介する人物は森田三郎さんという方で、千葉県で新聞配達をしていた方です。 千葉県の東京湾に面したところに谷津(やつ)という干潟があります。 現在は魚介類が生息し水鳥もやってくる素晴らしい環境の干潟になり、湿地の保存に関する国際条約であるラムサール条約に登録もされています。 しかしそれは現在の話で、30数年前は埋め立てを予定されていたため、犬や猫の死がい、ふとん、自転車など、あらゆるごみが大量に捨てられ、それらがヘドロの中に埋まっているようなひどい状態の場所でした。

あるとき、このような谷津干潟の状況を新聞で読んだ森田さんは、写真の場所が小さいころ遊んだ干潟であることが分かり、そのときから干潟を守りたい一心で谷津のごみを拾う作業を始めました。 以後、森田さんは新聞配達の仕事以外の時間をすべてごみ拾いにあてます。

「ごみを拾う」と簡単に言いましたが、これは並大抵の作業ではありません。 大量に捨てられたごみをヘドロの中から取り出しては燃やし、燃やしてはまたごみを拾う、ヘドロの匂いが身体に染みつく、拾うそばからごみを捨てる人がいる、周りからは変人扱いされる、このような中で毎日たった独りでごみを拾い続けたのです。

数年が経ったころ、ついに見かねて手伝いを申し出てくれた近所の主婦の人が現れました。 そして、その後少しずつ協力してくれる人が増えていきました。 その結果、谷津干潟は徐々にきれいになっていき、あるとき、森田さんはついに貝やゴカイが生息しているのを発見したのです。 干潟がきれいになっていくと、次第にごみの投げ捨ては止まっていきました。 こうして、谷津には湿地が戻り、水鳥も来るようになり、ラムサール条約に登録されるまでになったのです。

森田さんの努力は私たちにいくつかの教訓を示してくれます。

一つは、「たった独りでも社会を変えることができる」ということ。 私たちは独りの力など無力だと思いがちですが、そうではないことを森田さんは証明してくれました。

二つ目は、最初に述べたことと矛盾するようですが、「他の人びととの協力が大事である」ということです。 森田さんの行動が周りの人の共感を呼び、意識を変えたという点で、たった独りで社会を変えたわけですが、その後の他の人びとの協力がなければ森田さんの努力は実を結んだかどうかわかりません。 他の人びととの協力は本当に大事なことだと思います。

教訓の三つ目は、「継続することの重要性」です。 森田さんは来る日も来る日もごみ拾いを続け、それを何年も続けたことでついに理解者が現れたのです。 私たちは結果がすぐに出ないとあきらめてしまうことがややもすればありますが、あきらめず努力を継続すれば結果が出てくるということを信じて持続的な努力を続けていきたいものです。

2学期の始まりにあたって、森田さんにならい、自分の力を信じ、仲間を信頼し、そして特に継続することの大事さを念頭において勉強やクラブ活動など学校生活を大いにがんばってくれるよう願っています。