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校長先生のお話

2010年07月度のお話

2010年07月度のお話です。過去のものから新しいものへ順番に並んでいます。

2010年07月21日

1学期終業式

 現校舎を使用できる最後の1学期が終わりました。君たちはこの1学期をどのように過ごしましたか。今日はまず1学期を振り返ることにします。

 マタイによる福音書第21章で、イエスは神殿に仕えている宗教指導者たちに向かって、次のように語りかけています。「あなたたちはどう思うか。ある人に息子が二人いたが、彼は兄のところに行き、『子よ、今日、ぶどう園に行って働きなさい。』と言った。兄は『いやです』と答えたが、後で考え直してでかけた。弟のところへも行って、同じことを言うと、『お父さん、承知しました。』と答えたが、出かけなかった。この二人のうち、どちらが父親の望みどおりにしたか」

 イエスは今日も私たちに問いかけておられます。「きみはどっちの人間ですか。『いやです』、と言ったものの、「考え直して」出かけていくほうか、『はい』と返事をしたものの、結局実行しないままで終わってしまう方か。」

 4月に、新しい学年の最初の決意、新しい学年での決心など、多くの人は目標を立て、がんばろうと思って今年度をスタートさせたことでしょう。今日、振り返ってみて、どうでしたでしょうか。手ごたえのある日々でしたか。最初の決心をどこかに忘れてしまったような日々でしたか。ある時期にもう一度やる気を出して途中からでも改めて努力した1学期だったでしょうか。

 反省、振り返りを意味するREFLECTION(リフレクション)は、もう一度光をあてることを意味しています。光をあて、はっきりと見つめ直し、もう一度取り組んでいく、再スタートしていくことがリフレクションです。よかった点も確認がなされると、輝きが再確認されますし、まずい面は、しっかりと光をあてることで、細かいところまで見つめ直すことによって失敗を繰り返さなくなるはずです。1学期の終わりにあたって、ぜひリフレクションをしてほしいと思っています。

 さて、これから夏休みに入ります。君たちはこの夏休みをどのように使いますか。成績の悪かった生徒は不得意科目克服のための勉強をしなければならないでしょう。ぜひ、がんばって遅れを取り戻してください。また、クラブをがんばろうと考えている生徒もいるでしょう。あるいは、旅行に行く予定を立てている人もいるでしょう。いずれにしてもはっきりしていることは、夏休みは学期中と異なる時間の流れがあるということです。朝早く起きるにしても、学校へ行く時間よりは遅く起きるでしょう。勉強をするにしても、一日中学校で勉強するのとはやはり違います。学期中と違って自分で自由に使える時間の多い夏休みをどう利用するか、充分考えてほしいと思います。

 一つの参考にしてもらうために、詩人の谷川俊太郎さんの詩を紹介します。「あわてなさんな」という題の詩です。

 花をあげようと父親は云う
種子が欲しいんだと息子は呟く
翼をあげるわと母親は云う
空が要るんだと息子は目を伏せる
道を覚えろと父親が云う
地図は要らないと息子がいなす
夢を見ないでと母親が云う
目をさませよと息子がかみつく
不幸にしないでと母親は泣く
どうする気だと父親が叫ぶ
あわてなさんなと息子は笑う
父親の若い頃そっくりの笑顔で

 ここでいう「父親」、「母親」とは、実の親ではなく広く若者を取り巻く社会環境全体と捉えるとよいでしょう。今の社会は完成品、出来合いのもので満ち溢れています。便利なツールも開発されていて効率よく勉強や仕事ができるようにもなってきています。これらがいとも簡単に手に入るのが現代社会です。花がほしければすぐに手に入れることができる、翼がほしければすぐに与えられる……。でも、そのような労せずに手に入れることのできるものは本当に自分の血となり肉となっているのだろうか?そうではないでしょう。また簡単に手に入ることに満足できない若い人は実は多いのではないでしょうか?花をもらうのではなく、種子から自分で育てて花を作りたい、自分の持っている能力を活かす場を見つけたい、そう思っている六甲生が多いことを私は願っています。

夏休みは通常と異なる時間や空間が与えられます。これは種子を育てる、あるいは羽ばたく空を見つける、あるいは地図を使わずに道を切り開く、そのようなことに挑戦するよい機会です。ぜひ、有効に使ってほしいと思います。

 最後に高校3年生に対して一言言っておきたいことがあります。

 君たちはこの夏、受験勉強、がんばってください。君たちの今年の夏は勉強です。そういう夏があってもいい。朝礼でも話しましたが、嫌だな、しんどいな、という縮み志向ではなく、自分の未来に向かって前向きにチャレンジしていく気持ちで勉強に取り組んでほしいと思います。後輩のためにも良い結果を出してください。

それでは、1学期の反省と夏休みの生活を思い巡らせながら、しばらく瞑目することにしましょう。