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校長先生のお話

2010年05月度のお話

2010年05月度のお話です。過去のものから新しいものへ順番に並んでいます。

2010年05月27日

熱い「思い」で体育祭を成功させよう

 3週間ほど前、私は「オーケストラ」という映画を観ました。

 主人公はロシアの元指揮者だった人物です。30年ほど前、ロシアは社会主義の国でソ連といっていましたが、当時、ユダヤ系の人を迫害する動きがありました。音楽の世界でもユダヤ系の演奏家は遠ざけられたのですが、この指揮者はあえてユダヤ系のソリストを迎えてチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を演奏しようとしました。しかし、演奏は途中で中断され、指揮者は以来指揮をすることを禁じられ、ソリストはシベリアに送られ、当地で亡くなります。楽団員もすべて解雇されました。

時は流れて現在になります。掃除をしていた元指揮者はたまたま支配人のデスクにファクスが届いたのを見ます。それはパリの劇場からのもので、予定していたアメリカのオーケストラが出演できなくなった、ついては代役として出演してもらえないかという招聘のファクスでした。このファクスを読んだ彼は、かつてのオーケストラ仲間を呼び集めて自分が指揮をしてコンサートを開こうと決意します。

何とか人数をそろえて彼らはパリに飛びます。演奏する曲はチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。そして彼は、ヴァイオリンのソリストにフランスで人気の高い新進気鋭の女性を指定します。彼女でなければならないのですが、なぜ彼女でなければならないのかはストーリーの展開に沿って徐々に明らかにされます。そしてコンサート当日、伝説の名指揮者と若手ヴァイオリニストとの共演が人気を呼んで劇場は超満員となります。そのような中で演奏が始まります。

けれども出てきた音はとても一流とは言えないしろものでした。あまり練習をしていないメンバーなので仕方がないとはいえ、聴衆はそれを知りませんから大きく失望します。

しかし、やがてヴァイオリンのソロが始まります。彼女はこの時点で、自分がなぜこの指揮者のもとでこのオーケストラと一緒にチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を演奏しなければならないかをすでに知っています。映画を観ている者にもやがてその理由は分かるようになっています。その理由についてはここでは紹介しませんが、彼女は万感の思いを込めて演奏を始めます。彼女の弾く最初の一音を聴いた時、劇場内の雰囲気は一変します。何と強い意志をもった力強い演奏なのか……。彼女の演奏にオーケストラ団員も目を覚まし、これに呼応して立ち直り、素晴らしい音を奏で始めます。こうしてコンサートは指揮者、ソリスト、団員が一致した素晴らしい出来栄えの演奏となり、感動のうちに終わっていきます……。

私は映画を見終わった後、人を感動させる演奏とはどのような演奏なのだろうかということを考えました。クラシック音楽は楽譜があり、そこに作曲者が演奏の仕方も指示しています。従ってある程度の技術があれば指示通りの演奏ができるはずですが、テクニックが素晴らしくてもあまり心に残らない演奏もあるし、逆に技術はそれほどでもないが心に残る演奏を聴かせてくれるオーケストラもあります。何が人を感動させるのだろうか。

 私の結論は「思い」ということです。この曲に対する自分たちの思いがあり、その思いを指揮者と団員とで共有して表現することができたときに聴衆に感動を与えるのではないでしょうか。

さて、いよいよ来週の土曜日に2年ぶりの体育祭が行われます。昨年体育祭が中止されたため、前年の経験がない中での準備になります。これは高校3年生にとってかなり大きな不安材料でしょう。下級生は果たしてついてきてくれるだろうか……。

 しかし私は、仮設校舎の建設が始まり第2グラウンドが行進練習に使えなくなり、校庭も仮設事務所が建ったため一部が使用できなくなった、その中で高3の演技役員が中1だけに行進練習を一生懸命指導しているのを見て、体育祭に向けての高3生の熱い思いを感じました。これは恐らく私だけでなく、高2以下の下級生も感じたのではないでしょうか。この思いを全員が共有して練習を続ければ、今年の体育祭はきっと成功すると思います。君たちには伝統という心強い味方もいます。六甲の伝統は、1回行事が抜けた程度で崩れてしまうような壊れやすいものではないはずです。

君たちの熱い思いを一つにして体育祭を成功させていきましょう。